今回は、「骨盤臓器脱の術後に起こるトラブル」について、解説します。
術直後(手術を受けて退院するまでの間)のトラブルと、
中長期(術後数か月~数年)のトラブルに分けて解説いたします。
Contents
術直後(術後数日間)のトラブル
術後出血:ほぼ起こらない
骨盤臓器脱の経腟手術では、術後出血はめったに起こりません。
たまにあるのが、手術翌日に止血ガーゼを抜いたあとに、こすれて出血するケースですね。
頻度は、「年に1人いるかいないか」という感じです。
この場合ベッドサイドで止血を行えばOKです。麻酔も不要で短時間でできます。
一時的な排尿異常:一定割合で起こる
術後4日間は、おしっこの管(バルーンカテーテル)を留置して、膀胱を休めます。
この管を抜いた後に、しばらく排尿が落ち着かない人がいます。
↑手術で膀胱が刺激を受けて、こうなるわけですね。
軽度の排尿異常は、全体の1割くらいの方に起こります。これはいずれ落ち着いてきます。
年に数名ほど、バルーンカテーテルを抜いたあとに「尿が出にくい・なかなか出ない」という人がいます。
高齢で膀胱の収縮力が弱い人とか、もともと「排尿障害を起こす薬」(過活動膀胱の薬、精神疾患の薬、消化管の蠕動を押さえる薬など)を飲んでる人とかに起こりやすい印象がありますね。
この場合、関係ありそうな薬をしばらく止めて、バルーンカテーテルの留置期間を少し延長すれば、徐々に回復してきます。
痛み:誰でも多少の痛みがあるが、必ず消失する。
これは個人差が大きいです。
まったく同じ手術を行っても、全然平気な人もいるし、痛がる人もいます。
術後の痛みは、痛み止めで対処可能です。
退院する頃にはほとんど軽快して、しばらくしたら全員消失します。
便秘:しばらく便秘になる人は多い
術後トラブルの中で、圧倒的多数を占めるのが、この便秘です。
環境が変わって、寝ている時間が増えるので、術後は誰でも便秘気味になります。
全員にあらかじめ下剤を処方していますが、それでも便秘になる人がいますね。
まあ便秘しても、下剤を増やせば必ず解決するんですけどね。
ということで、こまごまとしたトラブルはありますが
「重大なトラブルはまず起こらない」と思っていただいていいでしょう。
中長期(術後数か月~数年)のトラブル
再発:再発率は1%程度
現在の手術手順を確立して、6年が経過しました。
この期間の再発率は、今のところ1%程度です。
「再発はほとんどありません」と言っても、差し支えないでしょう。
メッシュ露出・感染:今は無関係の立場となった
ワタクシここ3年以上、全員にメッシュを使わない手術を行っています。
よって現在では、メッシュ関連トラブル(露出・感染)とは無関係の立場となっています。
たまーに、5年10年前にTVM手術を受けた方の、メッシュ露出除去術を行うことはありますけどね。
性交障害:問題になったことはない
性生活を重視する人には、最初から腹腔鏡手術をおすすめしているので、性交障害で苦情をいただいたことはありません。
まとめです・・・
ということでまとめますと、↑このようになります。
人体相手の仕事だから、100%はあり得ないけれど・・・
12項目中9項目は、ほぼ克服できたと考えています。
残る課題は、「一時的排尿異常」「痛み」「便秘」の三つですね。
これらも時間とともに解決してくるので、ご容赦いただけたらと・・・